ゴルフメッキ工房 ブログ

アルファメックによるゴルフメッキ工房ブログです。
ゴルフメッキ工房では、オリジナルゴルフヘッドの製作を主な業務として営業しています。
カスタムヘッド製作やゴルフのことなどを現場から発信していきます。

遠回りが楽しいマッスルバック道

皆さんはアイアンにどんなタイプを選ばれていますか?私はタイトル通りマッスルバックを使用しています。マッスルバックを見栄で使っているのではなく、これじゃないとダメなんだという状況までになった経緯を今回書かせて頂きます。

なぜ難しい

マッスルバックを初心者に勧める人はいません。マッスルバックはスイートスポットが小さく、芯で捉えることが難しくミスショットが出易いということと、重心が高くヘッドスピードが速くないと打球が高く上がらないため非力では飛ばないということが、初心者には向かないという理由であると私は認識しています。

難しいと言われながらその形が残っているのには理由があるはずだと、清水の舞台から飛び降りるつもりでマッスルバックのアイアンを3番から入れてみることにしました。

芯で捉えた快感が病みつきに

マッスルバックに変えて初めてラウンドした時、今まで打てた事の無いような低く出て2回か3回ほど伸びあがっていく打球を見たことで私の中に電流が走り抜けました。

芯で捉えたことで手の感覚がなくなるというよりは、芯で捉えた瞬間、あのカチカチのゴルフボールが柔らかいテニスボールの様な感触に変化し、ぐっと押し込む様な右手へのリアクションがあるかないかの刹那、上記のような伸びあがる打球がどこまでも飛んでいく実像として世界に拡がっていくわけです。

あの球をもう一度打ちたい

この欲求は、ドライバーで誰よりも前に飛ばした時や、ロングパットを決めた時と同じかそれ以上に、身体に訴えかけてくるものでした。

芯を外した時のリスク

マッスルバックで芯よりトゥー側にボールが当たった場合、物凄い力のない打球がスライス気味に飛んでいきます。飛距離が相当落ちるので、池越えのショートホールなんかでこれをやった時の落胆はかなり大きなものになります。

また、高重心であるためスピンが非常にかかりやすくアゲインストの時に吹き上がり、ボールが押し戻されることもあります。そのため、低いボールが打てないと風の強いラウンドはかなり苦戦します。

それでもマッスルバックを選ぶメリット

マッスルバックを選ぶメリットは、ただ快感が身体を突き抜けるというだけでなくちゃんとあります。

まず先述の通り高重心のためスピン量が多いです。そのため、ウェッジの様にショートアイアンでもボールを止めやすいということが言えます。高重心はボールが上がりにくいのですが、その理由はトップブレードがボールを打つ時に衝撃に負けて進行方向逆側に倒れ込みにくいため、しっかりとバックスピンをかけていくこと、所謂ギア効果を生み出しやすいためです。

次にヘッドが小型であるため操作性が高く、インテンショナルフックやスライスを打ち別けやすいと言われています。私はこの域に全く達していないのですが、フルキャビティタイプのアイアンは慣性モーメントが大きく、直進性は高いもののフェイス開閉がやりづらい、操作性が悪いと言われています。

最後に番外編となりますが、マッスルバックは30年以上前のモデルであっても現役で戦えるほど完成度が高く、名器と呼ばれるアイアンを中古市場で安く手に入れることが出来ます。ただし、ゴルフ業界もマッスルバックの開発を行っていないわけではなく、鍛造技術の進歩により鍛造の薄肉化でヘッドデザインの変化が革新的ではないけれども確実に行われていて、過去モデルと比較すると現行モデルの打ちやすさや打感は格段に向上しています。

アンダースペック症候群にならないために

これは個人的な考え方なので参考にならないかもしれませんが、何故難しいクラブにこだわるかの根底にある考え方を書かせて頂きます。

アンダースペック症候群と呼ばれる、自分の体格や能力よりも下に位置するスペックのゴルフクラブを使用すると、最初は飛距離が伸びても徐々に道具の方へ身体が合わせて行き、結果的に手打ちになったり身体的能力が下がったりするという問題があります。

結果を出すために道具を選べることがゴルフ競技の醍醐味なのですが、もし自分が今簡単に飛ばせるクラブを持ったとしてもアンダースペック症候群になり、可能性をむしり取ってしまったらあとは年齢を重ねて二度とマッスルバックを振れなくなると思うのです。

練習場で芯を外したミスショットが出るたびに落ち込んでしまいますが、その時は冷静に芯で捉えられる様にハーフショットに戻すなど工夫して研鑽を積んでいます。