ゴルフメッキ工房 ブログ
アルファメックによるゴルフメッキ工房ブログです。
ゴルフメッキ工房では、オリジナルゴルフヘッドの製作を主な業務として営業しています。
カスタムヘッド製作やゴルフのことなどを現場から発信していきます。
ゴルフクラブの”さび”と”メッキ”の関係
ゴルフクラブの素材は、鉄以外にもステンレスやマレージング鋼など色々な鋼材が使われていますが、基本的に今回は軟鉄鍛造アイアンについてお話したいと思います。鉄は理科の授業で習う様に、酸化することで錆を発生させてしまいます。錆にも色んな種類がありますが、鉄の表面に通常出て来る錆は赤錆と呼ばれ、時間と共に浸食していき、凹凸が激しくなっていきます。その為、メッキをするわけですが、どういうメカニズムで錆の発生や成長を抑えているか説明させて頂きます。
さびの発生メカニズム
物凄い簡単に説明しようとすると、下の図式が当てはまると錆が発生します。
鉄 + 水 + 酸素(水素) = 錆
頭の良い人は、「じゃあ水を無くせばええやんけ!」と思われるでしょう。しかしこれが簡単ではなく、大気中に含まれる水分がそれを許してはくれません。湿度60%を超えると、鉄の表面が完全に水で覆われた状態になるのですが、塩分があれば30%程度でも腐食がスタートすると言われています。そして、酸素も大気中に約20%含まれている高濃度の気体ですから、避けることは難しいのです。
特に軟鉄鍛造アイアンと呼ばれるものは、純度の高い(混ぜ物の少ない)鉄なので、錆びるスピードが速く、小まめに水分を拭き取って、防錆油を塗ってあげないと本当に一瞬にして錆びてしまいます。
※塩分(塩化物)やりん酸(肥料などに含まれる)が錆に影響する話は割愛します
メッキの役割
軟鉄鍛造アイアンへのメッキの役割は、大きく分けて三つあります。
一つ目が錆びないようにすること。
二つ目がキズが付きにくくすること。
三つ目が外観を良くすること。
ゴルフクラブへのメッキは、一層、二層、三層、四層と場合によって変化しますが通常は三層処理となります。例えば、クロムメッキが最終層に来た時を例に取って、どうやって錆から素材を守っているかを図で説明します。
1.クロムメッキが一番表層(最終層)に来ている、一般的なメッキを例に取って説明します。メッキと素材(軟鉄鍛造)の断面を簡略的に図示したものです。
2.表面に水滴が付着したと想定した時、クロムは表面に強固な酸化被膜を形成するので、それがバリアーとなって酸化還元反応が発生しません。錆に非常に強いのがクロムの特徴です。
3.部分的に欠陥がある場合、要するにクロムメッキにキズが入ったり、メッキが飛んでしまった部分は、下地の光沢ニッケルメッキが剥き出しになった状態になります。その部分では、酸化還元反応が進行する為、ニッケルは溶け始めることになります。
4.腐食が始まると、ニッケル金属は溶けてイオン化し、水は水素ガスと水酸化イオンに変わります。この時、電子をやり取りするため、腐食電池と呼ばれています。
5.そのまま半光沢ニッケルメッキ層を浸食するように思われるでしょうが、光沢ニッケルメッキ層の方が酸化還元反応しやすいので、選択的に錆(腐食)が進行して行きます。その為、半光沢ニッケルメッキ層が錆びていく時間稼ぎをしてくれることになり、ひいては素材の鉄まで錆が進行することも遅らせることとなります。
試験結果とメッキの実際
具体的にノーメッキに近い一層メッキと三層メッキの比較をしたことがあります。比較すると言っても、長い期間屋外に放置して観察したのではらちが明かないので、メッキ業界では通常「塩水噴霧試験」という加速試験を用いて、耐食性のテストを行います。下にある写真は、耐食性テストの結果を比較したものですが、どちらも72時間塩水を噴きつけ続けたものですが、これだけ顕著に差が出てしまうことからも、メッキによって耐食性を持たせることの意義を感じ取って頂けるかと思います。
ゴルフクラブを長持ちさせるために
この記事を読んで頂きありがとうございます。専門的な言葉をなるべく使わないように心掛け、逆に化学反応については端折っての説明になり中途半端で心苦しいのですが、次のことに気を付ければ長持ちするということを説明したいがために記事を書きました。
その1.濡れたままにしないこと
錆の原因は水と酸素です。なので、濡れたクラブをそのままにしないで拭いて手入れしてください。
その2.キズが入ったらそのままにしないこと
腐食のスタートはキズからです。キズが入ってそこから錆が見え始めたら、リペアしてはいかがでしょうか。キズと錆が浅ければ、殆ど元通りに蘇らせることが出来ます。
ゴルフクラブと末永く付き合うことが出来れば、高級品でもランニングコストを抑えることが出来て良い買い物になるはずです。
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