アルファメックとゴルフメッキの歴史

ボロンメッキの開発

1991年、DP-601軟鉄鍛造アイアンにボロンメッキが日本で初めて採用されました。ゴルフヘッドにボロンメッキを採用した日本で最初の事例になります。そのメッキを作成したのがアルファメックです。


写真:現在のボロンメッキヘッド

メッキヘッドを作成した経緯

1989年、住友ゴム工業社クラブ技術部よりクロムサテンメッキに代わる何かが欲しいと要望がありました。初めての試みであり、さらに技術的な困難が伴います。弊社では耐食性と耐摩耗性を確保し風合いと触感が満足できる新しい表面処理が必要だと考え、直ぐに取り掛かりました。大阪産業技術研究所・表面処理の先生に相談すると、電子部品などに使われている無電解ニッケルボロン合金メッキが良いのではとアドバイスを受けました。一般的な無電解ニッケル・りん合金メッキ※1に比べるとメッキ液の管理が難しい、メッキ皮膜析出速度が遅い、薬品代が高い※2など欠点が多くありました。しかし、クロムメッキと比較すると、表面硬度は若干劣るが、耐摩耗性の要素である摩擦係数はかなり優れており、摩耗試験機による耐久試験ではクロムメッキを上回わりました。

ひとまずビーカーワークでワンセット準備し、当時関西アマチュア選手権にも出場し年間50ラウンドプレーするクラブ技術部のA氏に手渡されました。1年経過し、当時専務の私に「専務見て下さい。このメッキ、使えますよ。」と仰り、クラブを見せてくれました。表面の光沢感が増し、ニッケル色に少しゴールドを混ぜたような、滑らかな感じに変化していました。ヘッド同士がぶつかって、バレル研磨に似た効果が起こったようでした。

量産品に採用となりかけましたが、会社からの決裁がなかなか下りませんでした。主成分がニッケルのため、除草剤や肥料による表面の変色が懸念されましたが、メッキ後の電解クロメート処理※3を加えることにより、その不安は払しょくされました。こうして量産化が可能になり、今日まで続くゴルフヘッドへのメッキの歴史が始まりました。


写真:現在のクロムサテンメッキヘッド

※1 無電解ニッケル・りん合金メッキ
通常の電解メッキと異なり、次亜りん酸という還元剤を用い、化学反応によりニッケルとりんの合金を析出させる。

※2 薬品代が高い
無電解ニッケル・ボロンメッキの還元剤に使用されるアミンボランは、次亜りん酸と比較して5~10倍程度高価であり、メッキ液の寿命も短いため相対的に薬品代が高くつく

※3 電解クロメート処理
クロム酸を主成分とした溶解液に浸し電気分解をかけることで、表面を数ミクロンの化成皮膜を形成すると耐食性や対候性が一気に向上する。

ボロンメッキの工程概略

サテン研磨やサンドブラストを行い、空中放置され時間が経ったニッケル表面に他のメッキを積層し密着させることは非常に困難でありますが、脱脂や酸活性を研究し可能としました。こうした基礎技術がその後のアーメット鋼やチタン合金など難素材へのメッキ処理の足掛かりになっていると思われます。

また、発売後、他社からボロンメッキを採用したいとの誘いを沢山いただきましたが、すべてお断りしておりました。当時を振り返ると、クロムメッキとの差別化に成功したボロンメッキ開発は、メッキ加工を全て任せていただいた住友ゴム工業社との信頼関係があったため成しえたとも言えます。

その後に巻き起こるハードブラック旋風

1996年6月、マグレガーゴルフジャパン様よりメッキの引き合いがあり虎ノ門のオフィスへお邪魔しました。周りはビル街で、東京での初めての営業であったためかなり緊張したことを記憶しています。翌年エクセンチュリーと命名されるキャビティーアイアンの相談でありました。

マグレガーの歴史はその翌年で丁度100年になり、今回のアイアンはその記念モデルだということでした。今までにない高級感のある表面処理がご希望でした。英国薬品メーカーの技術で従来とは異なる黒味のある三価クロムメッキ※1を勧めようと考えました。新しいメッキ液のため、成分、浴温、電流密度、PHなど幅広いデータを取り試行錯誤を重ね、同時にメッキ設備の改造を特急で行いました。

ハードブラックと名付けたエクセンチュリーが発売されると予想以上に評判が良く、新規性のあるメッキの効果もあったのではと思いました。翌年2月に行われたジャパンゴルフフェアの行き帰り、新幹線客室ドア横に黒の印象が強いアイアンの吊り広告が貼られており誇らしかったのを記憶しています。

アイアンヘッドの製造は、鍛造工場 → 研磨工場 → メッキ工場 → 組立工場、の流れとなります。研磨、組立を含め、取りまとめを行っている姫路市のヘッドメーカーのプロックス(現プロテックス)からメッキ加工を依頼され、エクセンチュリー生産は順調に始まりました。

ところがしばらくすると兵庫県市川町のヘッドメーカー数社から申し合わせたように問い合わせが来ました。「ハードブラックメッキをお願いしたい。」と、言う内容でした。ゴルフヘッドは市川町周辺の地場産業であり工場同士の交流も盛んで、業界の情報や新しい製品の噂はすぐに伝わるようです。

そのころ市場は、軟鉄鍛造アイアンからチタンフェイス・ステンレスボディの複合アイアンに移行を始めていました。また、住友ゴム工業社では鍛造アイアンヘッド調達先の大陸への移管準備が徐々に進んでおり、20年以上続いた住友ゴム工業社傘下の鍛造、研磨、メッキの下請け数社が、弊社も含め取引の終焉を迎えようとしていました。住友ゴム工業社担当者からは、「他のヘッドメーカーのメッキも遠慮せずに受けて下さい」と少し前からお言葉を頂いていましたが、他のメーカーも同様に大陸移管が進み、そう簡単には同様の規模で新規受注できるような状況ではありませんでした。

会社の危機を乗り切るため、注文頂いたハードブラックメッキはすべて受注し、軟鉄鍛造アイアンを中心に月5,000~8,000個の生産量が二年ほど続き、国内ゴルフ業界に旋風を巻き起こしました。その後収束するかに思われましたが、1998年ルーツアイアンに採用されました。防弾チョッキにも使われるアーメット鋼を用いたフェースが特徴で、ハードブラックメッキによりその硬さが強調され、大きなヘッドが引き締まって見え、販売好調のお手伝いができたと自負しております。

ハードブラック旋風により、兵庫県市川町周辺にお客様も増え、お付き合いは令和現在も続いています。

※1 三価クロムメッキ
無水クロム酸(六価クロム)を使用できない環境での代替技術として開発されたメッキ品種だが、風合いは若干黒味がかった感じがあり、電装関係などプラメッキの最終処理として幅広く利用されている。

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